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JEFF MILLS×PUBLIC IMAGE

PUBLIC IMAGEデザイナー・玉木竜二郎が探る
ジェフ・ミルズ「空白の4年間」

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Photo: Kentaro Matsumoto(Interview) , Hideyuki Uchino(live) Text: honeyee.com

2006年10月「宇宙へ旅立つ」と日本でのDJ活動を封印した「ターンテーブルの魔術師」ジェフ・ミルズが、新アルバム『SLEEPER WAKES』を引っ提げ、4年ぶりとなる地球への帰還(?)を果し、渋谷・WOMBのカウントダウンイベントに降臨した。今回、そのイベントのためにジェフの衣装を制作、また本人との親交も深い、ファッションブランド、PUBLIC IMAGEデザイナー・玉木竜二郎が、ジェフ・ミルズ宇宙への旅立ちから帰還に至るまでの「空白の4年間」を探る。

JEFF MILLS

1963年、デトロイト出身のテクノDJ、ミュージシャン。「ターンテーブルの魔術師」の異名を持つ。「宇宙」をテーマに、コンセプチュアルな作品を発表。

http://www.myspace.com/jeffmillsofficialspace
http://www.axisrecords.com/jp

玉木竜二郎

1976年、熊本出身。ファッションブランド、PUBLIC IMAGEデザイナー。また、イベント・プロデュースやパブリシティ・デザインを手掛けるなど、幅広い分野で活躍。

http://www.public-image.jp/

 

玉木竜二郎(以下:T)
「先頃リリースしたニューアルバム『SLEEPER WAKES』には、どんなテーマを込めたんですか」
JEFF MILLS(以下:J)
「ニューアルバムのテーマは、時間的、空間的『変化』を表現することでした。そして『変化』を表現するうえで『スパイラル構造』が重要なカギになると考えたんです。例えば、宇宙船が地球から月に向かう時、宇宙船は真っ直ぐ月に向かわず、円を描くように月に向かいますよね。それは、時間的、空間的『変化』の中で『スパイラル』が描かれた、という見方が出来ます。また、銀河や星雲など、宇宙を構成するほとんどのものは『スパイラル構造』で出来ています。そこで『スパイラル構造』を音楽で表現することで、同時に『変化』というものを表現しようと考えたんです」

T :
「来日は4年ぶりになりますけど、この4年間で自身の音楽にはどのような変化が現れましたか」
J :
「クリーンでクリスプな感じの音から、少しザラついた、異分子が入り込んだ感じの音に変化しました。日本のファッションやアートなどのカルチャーを目にしながら、日本の人たちが未来に向かうにあたり求めているものは何か? ということなども考え、この4年間で音を変化させたんです」
T :
「WOMBでのレジデントやWIREへの出演など。日本で定期的に続けてきたことを一度封印したのには、どのような理由があったんでしょうか」

 

J :
「当時、僕はあまりに頻繁に日本に来ていました。そのことに疑問を感じたんです。クリエイションをするうえで、果してそれはいいことなのか? と。クリエイションのための時間を作り、アイディアを蓄積する。そして、蓄積したアイディアを一気に放出した方が、受け手の人に、より真剣に自分の音楽を捉えてもらえると考えたんです。一時的とはいえ、日本の人たちとの関係を断つのは正直勇気が必要でした。けれど、宇宙的なスケールで考えれば、4年間なんて一瞬です」
T :
「今回WOMBで開催されたイベントのためにジェフの衣装を制作させてもらいましたけど、ジェフは、音楽とファッションの関係をどのように捉えていますか」
J :
「僕はこれまで、例えばファッションやアートなど、音楽以外の方法でも『テクノ』を表現しようと試みてきました。『テクノ』は何も音楽のフォーマットだけを指すものではありませんから。また、音楽の側面だけを捉えたとしても、単に楽しむためだけの音作りも出来れば、よりコンセプチュアルな表現も『テクノ』では可能になります。『テクノ』は実に自由なものであり、他の音楽ジャンルと比べても、発展の余地がまだまだある、未来型の音楽ジャンルだと僕は考えています」
T :
「確かにそうですね。今回、衣装を作る過程で、ジェフはひとつの音楽的フォーマットだけでなく、テクノシーンにおいてひとつのカルチャーを構築しようとしている、と感じました」
J :
「これまでのテクノのシーンでは、音の背景にある『テクノロジー』が重視されていました。けれど現在は『アイコンとしてのDJ』とでもいうか『DJの見え方』が非常に重視されます。そのため、DJをする時の自分自身の見え方や行動を意識的にフィーチャーしなければなりません。そこで、自分が考えるコンセプトを理解してくれて、そのコンセプトを洋服に落とし込めるデザイナーを探したわけです。今回リュウが制作してくれた『セカンドスキン』という名のジャンプスーツは完璧な出来でした。名前の通り、自分自身の皮膚のようでしたし、自分のやるべきDJプレイに集中することが出来ました」
T :
「今回の衣装は、オートクチュールのように『誰が、何のために着るか』というのが明確なだけに、とても作りやすかったです」