ROC TRAX｜THINK PIECE｜honeyee.com Web Magazine

──: 今回のコンピには、TAAR、BAZZという新たな若手も参加していますね。
M :: 「TAARは年が一回り違う僕の弟なんです。少し前までイギリスに留学していたんですけど、元々バンドをやっていて最近打ち込みを始めて、曲が単純に格好良かったから『コンピに入れようよ』と。BAZZに関しては、以前から若いDJの子達の間で『こいつヤバい！！』って噂になっていて、NIKE＋の企画でランニング用のDJミックスを制作している時、BAZZに『何か曲ない？』と聞いたら、ポンと出てきたのが、コンピにも収録されている『LDS』という曲なんです」

──: BAZZは、50分間に50曲のダンスクラシックスをミックスした音源で話題になっていたんですよね。
M :: 「その音源がErol Alkanのブログで大盛り上がりになって。八王子在住、20歳の普通の男の子です。まだ僕たちの前ではガチガチに緊張していますね（笑）」
──: BAZZの音を聴くと、とても20歳のそれとは思えないですよね。大人びている、というか。
D :: 「音だけ聞くと、本当に20歳！？　と思いますよね。オッサンじゃないの！？　みたいな（笑）」
M :: 「僕は20歳くらいの時に音源をリリースして、その後あっさり挫折しているんですけど、TAARやBAZZみたいな若い子たちもこれからが本当の勝負ですよ。昔に比べて曲作りや音源のリリースが容易になった反面、情報の波に埋もれない、高いクオリティの曲を作り続けないといけないので。ROC TRAXがインディーで再出発したのも、自分たちでクオリティコントロールをしっかりやらないと、というのがあって」

D :: 「若い子たちには、売れた後、是非1回すさんだ生活を送ってダメになって欲しいですけどね（笑）。1度ヨレヨレになったところから新たに生み出されるものは一体何なのか！？　って（笑）。まあ、それは冗談ですけど、若い子たちが前にどんどん出て、『20歳の子がフジロック出てるよ！！』みたいな環境、作れたらいいですね」
──: 今回のコンピ、前回のものと比べて出来は如何ですか。
M :: 「オレの個人的な制作環境はそれほど変化していないんですけど、単純に自分のスキルがちょっとだけ向上して、それが曲に大きく反映されていますね」
D :: 「確かに。例えばDEXPISTOLSの場合、制作オペレーションはMAARがやるんですけど、試作段階の音のバランスが客観的に聴いてかなり上手く整えられるようになっていると思います。M.S.K.も『MAARのスキルが上がった』と話していましたし。レーベルメイト各々の努力、それに必要にかられていた、という部分も正直あるとは思うんですけど、全体のクオリティはかなり底上げされていますね」
M :: 「あと、前回はいわゆるエレクトロムーブメントありきで、そこに対して自分たちなりの新しい提案をしよう、というのが心のどこかにあったんですけど、今回は自分たちのオリジナルで次のムーブメントを作ろう、という気持ちが強くありましたね。自然に今の自分たちがやりたいことが出来たし、自由度が増しています。ただ、今回も制作期間が短かったから、自分的には、これならギリギリ世の中に出せるかな、という感じではありますけど」

──: どの辺がギリギリなんですか。
M :: 「感覚的な問題なんで、微妙なニュアンスを言葉で説明するのは難しいんですけど、簡単に言えば、お客さんを目の前にした瞬間、DJとしてその曲をかけられるのか、かけられないのかみたいな」
D :: 「ただ、これから良くなる余地、というのは十分にあるんですよ。前作のLESSON.5より今回のLESSON.6の方が、クオリティが断然上、ということは自信を持って言えますし、ヤバいスキルを備えた若手も入ってきているんで、ROC TRAXの伸びしろはまだまだあると思います」