14 12/18 UP
Photo & Text:Takashi Okimoto
今日の写真集ブームにおいて、日本人作家と日本製の写真集はとりわけ注目される存在だ。森山大道や中平卓馬、アラーキーこと荒木経惟らは写真界におけるレジェンドだが、彼らが出版してきた写真集もまた伝説の一部となっている。さらに、日本人の勤勉さに裏打ちされた職人魂が生み出す高い印刷と用紙の品質、デザイナーが腕を振るった装幀の美しさと完成度の高さ、名編集者たちが打ち出したコンセプトのユニークさはいまなお他の追随を許さない。そのメイド・イン・ジャパンの品質と伝統をパリフォト会場の一角で守っているのが、デザイナー、町口覚が率いるマッチアンドカンパニー(※7)だ。
2008年にパリフォトへ初出展し、2014年で7年目の参加となる彼らのつくる写真集は、作家・印刷・用紙・編集・デザインの制作にかかるすべてがメイド・イン・ジャパンであることにひたすらこだわり続けている。そのアナーキーな姿勢が代えがたい個性として現地で受け入れられ、同時にメイド・イン・ジャパンの品質も賞賛されつつ関係者とコレクターから熱い支持を得ている。森山大道、荒木経惟、立木義浩といった日本のレジェンド写真家の作品集をメインとし、これに大森克己、北野謙、長島有里枝といった中堅作家の作品集が続く。2014年は森山大道の写真と太宰治のテキストのコラボレーションによる『Dazai』と、沢渡朔のモノクロ作品をまとめた『Showa 35, JAPAN』などの新作を発表、持ち込んだ冊子をほぼ売り切るという良好な戦績で、すでにパリフォトの書店コーナーの顔として欠かせない存在となりつつある。いま、最も欧州で写真集の新刊が期待されている日本の出版社は彼らを置いてほかにはないだろう。まさに、パリフォトにおける日本代表という重責を担う存在だ。
bookshop Mの2014年新作、森山大道の写真と太宰治のテキストをコラボレーションした『Dazai』。森山(写真)・本尾(編集)・町口(デザイン)によるMMMレーベル第五弾
bookshop Mの町口景のM Lightレーベルの新作は沢渡朔の『Showa 35, JAPAN』。布張装幀の表紙、モノクロと色褪せたカラーによる美麗な印刷は頬ずりしたいくらい素晴らしい
今年から始まった写真集イベント「Polycopies」の会場はなんと船上。セーヌ川を走る屋形船をまるまる一艘借り切り、船内でイベントを行うというユニークなアイデアを採用
「Polycopies」の会場風景。船上であるがゆえに“揺れる”という問題はあるが、注目度は抜群で写真集関係者を中心に多くの来場者を集めた。来年以降も続けてほしいイベント
「Polycopies」に出展したアートビートパブリッシャーズ。横田大輔『site/cloud』と『CORPUS』、オノデラユキ『ELEVENTH FINGER』、ヴィヴィアン・サッセン『LEXICON』などを販売
「Polycopies」に出展した尾仲浩二率いる「ギャラリー街道」のブース。ギャラリーは惜しまれつつも同時期に閉鎖が決まったが、パリでの出展は好評。良心的な価格設定が印象的だった
※7 東京在住のアートディレクター、町口覚が主宰するデザイン事務所・写真集専門出版社。日本の作家、日本の用紙、日本の印刷所にこだわった写真集を生み出している。http://bookshop-m.com