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THINK PIECE

Broken English

ゾエ・カサヴェテス、
『ブロークン・イングリッシュ』を語る。

08 12/22 UP

Text&Photo:Shoichi Kajino

──
音楽といえば、あるシーンでBGMにフェニックスの曲が使われていましたね。それは友人のソフィア・コッポラを意識しての選曲だったのですか?
「そうね。私も好きな曲だったし、ちょっとした個人的な思惑を作品に忍ばせて、友人にシャウトアウトを捧げるのは面白いし、観る人も楽しめたりするわよね」
──
昔からの友人であるソフィア・コッポラとは、同世代の監督ということもあって、よく比較されているのではないかと思いますが、彼女はあなたにとってどんな存在なのでしょうか?
「彼女はとても素敵な人よ。私たちはバランスが取れていると思うの──私がよく喋って騒々しいのに対してソフィアは物静かでストイックなタイプ。お互いに自分にない部分を補い合ってきたんじゃないかしら。そしてもちろん彼女は私と同じように映画一家の出身だから、境遇を理解し合えるところもあるし。ソフィアはとても親切で誠実で、深い友情を感じているわ。親友と衆人環視の中で友情を育んできたなんて奇妙な感じもするけれど、彼女に出会えて幸運だったと思う」

──
ソフィアもあなたの撮影現場を訪れたそうですが、監督としての先輩である彼女から具体的なアドバイスなどはあったのですか?
「脚本の段階では彼女に意見をもらったのだけど、撮影に入ってからは自分でコントロールするよう努めたわ。その上でもし何か問題があれば、彼女に電話してどう思うか訊いてみるの。彼女は私のスタイルをリスペクトしてくれたわ。ソフィアが『ロスト・イン・トランスレーション』を撮影していた時には、私も東京の撮影現場に遊びに来たの。お互いの撮影のスタイルも両極端といっていいほど違うと思うわ。彼女はスタッフを指揮するのがとても上手なの。作品の雰囲気にも表れているけれど、もの静かで落ち着いていて。初めて彼女に会った時は何を言っているのか聞こえなくて何度も聞き返したくらいだったけど、今は少しは声が大きくなったかしら(笑)。それに対して私はちょっとヒステリックかもしれないわね。私は物事を進めるのにエネルギーが必要だし、それが私のやり方かもしれない」
──
それから、やはり印象的だったのは、全編にわたって衣装がとてもおしゃれだったことです。カジュアルではあるけど、ノラがシーンが変わる毎に着替えていたのも強いこだわりを感じました。
「ありがとう。この映画の衣装デザイナーのステイシー(・バタット)はスタイリストで、古くからの友人でお互いのこともよく知っていたからイメージを伝えやすかったわ。私は洋服が大好きだし、ノラの衣装には自分のワードローブはもちろん、パーカーや友だちの私服も入っているのよ。ステイシーには、私たちのようなスタイル、ただし完璧すぎないように、とお願いしたわ。実際にはノラは35回着替えたんじゃなかったかしら……? 次回作では着替えの回数は半分にしないとね(笑)」

 

『ブロークン・イングリッシュ』

脚本・監督:ゾエ・カサヴェテス
製作:アンドリュー・フィアバーグ/ジェイソン・クリオット/ジョアナ・ヴィセンテ
音楽:スクラッチ・マッシヴ
衣装:ステイシー・バタット
出演:パーカー・ポージー/メルヴィル・プポー/ドレア・ド・マッテオ/ジーナ・ローランス他
製作国:アメリカ/日本/フランス(2007)
上映時間:98分
配給:ファントム・フィルム

恵比寿ガーデンシネマ他で上映中

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