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THINK PIECE

SPARKLE!

HIROMIXが「音楽×アート」の総合アート作品で見せた
未来への道標

08 12/5 UP

Interview:Hisao Ebisu (Onegram) Photo & Illust:HIROMIX

──
2008年は久しぶりに活動を再開された年だったと思いますが、活動休止状態だったここ数年間はどのような状況だったのですか?
「高校を卒業してすぐにデビューして、逃げ出したくなっても10年間はちゃんと写真に取り組もうと決めていたのですが、10年経ったころでふと気が抜けてしまいなんとなく休み始めました。嵐のような忙しさから逃げ出してしまいたい気持ちが以前からありました。私がデビューした当時の日本は、アートに対しての理解が浅く、写真芸術への理解が深い海外への移住を考えたりもしましたけど、その時はただ目の前の仕事をこなしていました。それに加えて当時は写真を撮ること以外にも大変なことがたくさんあって。その時は正直ネガティブ思考になっていました。デビュー後はかなり多くの人が周りに集まってきて、それに対応しきれず、それにいい人は控え目だから何となく疎遠になるし。チヤホヤされて何故か好きでもない人とお付き合いしてしまったり、アプローチを断ったり、振ったら逆ギレされて嫌な思いをしたり、良い出会いもすぐ噂になってしまったり……。そういうことがとにかく面倒でした。会ったこともない人にプラスの感情やマイナスの感情を持たれて、『HIROMIXではなく、私自身を見ている人はいるのかな?』と。どこか自分が自分でないような感じがして、そこでようやく『おかしいな』と。そこで自分からのSOSに気付いて、心をリセットするために休み始めた時は、周囲から不思議がられたりもしましたけど、『緩急自在』に過ごすのは良かったです。
今の世の中、時間の流れが早すぎて色々なことが急激に発展してきた部分があると思いますが、結局そのしわ寄せがきますから。これ以上の地球の発展を望むならこれまでの方法を改めないといけない、と思います。無理をしてきた人は可能な範囲で休んで、バランスを取らないといけない。工夫次第で気分転換の方法はあるし、1日休みの日でも上手く充電して欲しい。何もしない時間を意識的に作ればまたやる気が湧くはずだし、エネルギーを使った後に充電するのは当たり前。そんな風に自分自身を保つことを学んで、今がある感じです。あとは、30歳を過ぎてからこれまでの人生を振り返ったり、『まだ自分が出来てないことは何だろう?』、『愛って何だろう?』と考えています」

 

──
ティーンエイージャーでデビューして、90年代に HIROMIXが表現した"Girly"という感性は、その当時の同世代の女の子の視線や感覚そのものだったと思います。その当時と現在、何か心境の部分で変化はありますか?
「特に変わりなく目の前の輝いている景色や人を撮っています。はじめの頃は"Girly"という言葉を何度も聞いているうちに嫌になることもありましたけど、今振り返ると良いカルチャーだったと思います。当時は今のように『カワイイ』ものが世の中に溢れている時代ではなかったので。ただ当時も『カワイイ』ものとは特別意識はせず、単純に好きなものを撮っていました」
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渋谷駅や東京湾の写真、HIROMIXの撮る東京のランドスケープは素晴らしいと思います。そこには自分たちの世代ならではの視点を感じ取れるし、感情移入、共感が出来ます。東京を撮るという事に対して何か特別な意識はありますか?
「ありがとうございます。特に意識はしていないのですが、未来都市のような不思議な魅力、独特の雰囲気は良いです。東京には人々の優しさも溢れていると思いますし。風景写真は男性も多く共感して下さるので嬉しいです」
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写真家として、雑誌や広告などでのアサインメントワーク(仕事)と、パーソナルな作品の違いをどのように捉えていますか?
「特には分けていません。受けた仕事は被写体やメディアの世界観を第一に考え、常に楽しい現場を心掛けています。プロフェッショナルな人、写真芸術に対する理解の深い人は、洞察力、理解力に優れているので仕事もしやすいです。あとは、撮りためてきた作品が広告や雑誌に起用されるパターンもありますし、アサイメントワークでも『プライベート作品のように撮影して下さい』と言われることもあります。少し前まではクラブで格好良い男女を撮影したりしていましたけど、最近は再び素朴で穏やかな日常場面を撮ることが多いです」