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THINK PIECE

JEAN TOUITOU: A.P.C. KITA-AOYAMA

ジャン・トゥイトゥが見据える、A.P.C. の現在、そして東京

08 10/10 UP

Text&Photo:Shoichi Kajino

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世界の価値が平均化する中で、今や世界中の街に並ぶブティックはどこも同じですし、ファッションのセンスについても同様に感じます。そんな中でも東京にはいまだ東京発信の東京的ないくつかのブランドによって形成する流れや可能性も確実にあるように思いますが、A.P.C.にとってはこのマーケットはどのように写っていますか?
「確かに東京的なブランドはありますね。彼らは世界でも十分に通用する可能性がありながら、海外進出には意外にも消極的なのは不思議に思います。それから日本のファッションを見ていると、ビッグ・メゾンによるモード、そうでなければストリート、その両端で片付けられているのを感じます。市場は成熟しており、産業もアートも溢れている中、僕たちは"買いやすいストリートウェアではない"クリエイティヴな洋服を作って『A.P.C. = プロダクションとクリエーションのアトリエ』と宣言するのは、難しくさえ感じますね」

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なるほど。それではもっとシンプルに最近の日本のファッションはどう写っていますか?
「日本では誰も決められたキャラクターに自分自身を縛り付けているように感じます。ある女の子は『カワイイ』服しか着ない、ある女の子は売春婦みたいな服しか着ない、といった具合に、誰もが映画のキャラクターを演じているかのようで退屈に思えます。せっかくの白いキャンバスにお決まりの絵しか描かないのは残念です。僕にとっては、ソフィスティケイションというのが重要な問題です。ただしソフィスティケイトされていてリッチであると、今度は途端に人間らしくなく、つまらない絵のようにしか写らないものです。例えばヴァカンスの最中、人はリラックスしていながらも、どこかにスタイリッシュでありたいというような願望が当然あるでしょう。ただし、朝の市場にパンとミルクを買いに行くのに高いヒールの靴を履いて、バレンシアガのバッグを持っているような女性がいます。あれは、まるで調子外れの歌を歌っているようなものですね。僕は決して"カジュアル"が好きな人間ではありませんが、それにしてもです。そもそも男性は"カジュアル"に陥りがちなんです。それは僕も含めてかもしれません。だから僕はよりソフィスティケイトされた女性のファッションの方が楽しく思えるのです。かといってソフィスティケイトされすぎた男性も、またタチが悪いですね…。ところかまわずジュエリーなんかをつけたりして…ああ、耐えられないですね…(笑)」

 

A.P.C. 北青山店

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