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結成20周年を迎えたスチャダラパー、
コラボ音源とPV集のセットをリリース。

08 12/9 UP

Text:Tetsuya Suzuki Photo:Shoichi Kajino

──
でも現在は、ラッパーやDJが"ミュージシャン"として認められています。
S :
「僕たちが始めた頃は、20年後にヒップホップがあるとは思わなかったし、まして、メインストリームの一画になるなんて思いもしなかったから。今でも忘れられないのが、ミュージックマガジンで中村とうようさんがPUBLIC ENEMYに対して0点の評価を下していて、『ヒップホップってキワモノなんだな』と思ってた。『Chuck Dはリズム感が悪い』とか書かれていて」

──
スチャダラパーにとってのヒップホップとは何を指すのでしょう?
B :
「発想というか、哲学や美学なのかな。それは20年前から変わってない。逆にそれを持ってさえいれば何でもいいと思いますけどね。いってみれば、ここ数十年間のユースカルチャーにあった考え方。サンプリング感覚というか、コラージュ感覚というか。音楽だけじゃなくて、映画もアートも。未だにその感覚にしびれている」
──
それは三人に共通する感覚。
B :
「Public EnemyやDe La Soulがサンプリングで作り上げていた感じも、技術的には容易に出来るようになっているけど、その時代にそれをやってのけた発想の部分は未だ越えられることはないし、『何でこれとこれを合わせたの!! 偶然なの?』と思わせるような発想が一番重要で、それがあればヒップホップとして成立すると思うんですよ。大人になるにつれてそういうことをより実感するようになった」
──
そして今は、そういうヒップホップ的なセンスが世の中に溢れていますよね。
B :
「そう。でも自分たちとしてはその当時、その瞬間にヒップホップにショックを受けたから、そのヒップホップのマナーから外れていると、目に付いちゃうんですよね。『それは単にパクリでしょ』と。そこが気になっちゃう。説明し難い感覚ではあるんだけど。『何でこれがアリで、何でこれがナシなの?』と言われると説明し難い部分ではあるんだけれど。考え方だからね」

 

──
ヒップホップが音楽の歴史でまだ突然変異の異端児だった時代に、その中でもさらに異端の存在としてスチャダラパーはデビューしてしまったわけですよね。でも20年続けてきた中でスチャダラパーに憧れて音楽を始めた若い子がいるじゃないですか。そういう自分達の影響力を『声を大にして伝えたい』みたいな気持はありますか? 恥ずかしいかもしれないけれど。
B :
「『スチャダラパーさんに影響を受けました』と言ってもらう機会はあるんですよ。音楽の人に限らず。でも、ラップしている子で『スチャダラパーさんに影響を受けてやってます!!』という人に限って『それで、これなの?』みたいなことが多いよね(笑)。それとは別に、お笑いの若手の子に『僕達スチャダラ世代なんです』と言われることがあるけど、そういう子の方が『なるほどね』と思わせる。違うジャンルの人たちの方が『自分達が考えていたようなことを突き詰めて、更に面白いことをやろうとしてるな』と思わせてくれるんですよね」
A :
「僕等も音楽だけに影響を受けて始めたわけじゃないんで」
B :
「それこそお笑いやマンガの影響を受けてるし。その要素を音楽に入れていったわけだし」
──
逆に『日本人がヒップホップ出来るのか?』とか『本当のヒップホップとは?』みたいなものも今は無いですよね。
A :
「そこは『俺が思っていたヒップホップと違う』みたいなことはありますけどね。日本人特有のジメジメ感が嫌だからヒップホップ始めたのに、ヒップホップがその方向に近づいている感じがありますよね」
──
ラップで『親を大切にしろ』とか『辛くても頑張れ』みたいなことを言う人ですよね。
A :
「そういうのが嫌だからヒップホップが面白かったんだけど」
B :
「長い時間を経てよりアジア的な感じが出てきたんでしょ。しょうがないというか、当たり前なんだよ。韓国のやつを聴いても近い部分があるし、『日本に来ればいいのに』と思うくらい似てる(笑)。和モノレアグルーヴなんかも、和モノ感をそんなに出すつもりが無くても、出ちゃうんだよね」