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THINK PIECE

Simian Mobile Disco×大沢伸一

Electro is dead?!ダンスミュージックの行方

08 7/22 UP

Text:Tetsuya Suzuki Photo:Kentaro Matsumoto

先ごろ、早くも3回めとなる来日公演を果たしたシミアン・モバイル・ディスコ。
エレクトロという曖昧なカテゴライズに収まり切らない彼らの音楽性と姿勢は、
ここ日本でも独自の存在感を放っている。彼らと日本のダンスミュージックを牽引する
DJ/アーティスト・大沢伸一が、エレクトロやダンスミュージックをめぐる現在、そして未来を語る。

シミアン・モバイル・ディスコ

イギリスのロックバンド、SIMIANに在籍していたJames FordとJames Shawにからなるエレクトロ・デュオ。バンド解散後の2004年頃より正式に活動を開始、ダンスフロア映えするトラックを次々と発表している。アルバム『Attack Decay Sustain Release』、ライヴ盤『Live in Japan』(ともにHOSTESS)が発売中。
http://www.simianmobiledisco.co.uk/

大沢伸一

コンポーザー/DJ/ミュージシャン/プロデューサー。昨年9月に日本で発売されたアルバム『The One』が、この秋UKのSouthern Fried RecordsとUSのDim Mak Recordsよりリリース。
http://www.shinichi-osawa.com/

 

──
今回、実際に顔を合わせるのは初めていうことですが、大沢さん、シミアン・モバイル・ディスコ(以下: SMD)はともにエレクトロと呼ばれるシーンの中心にいると目されています。しかし、それぞれが今のスタイルを獲得するまでには音楽的な変遷があり、スピリットの面では、実は現在のシーンとは同一化できない部分があると思います。逆に言えばこの2組は音楽に対する考え方にお互いが共感できるところが多々あると思うんです。 さて、大沢さんがSMDに対して感じる面白さはどんなところですか?
大沢伸一(以下: O )
「僕がSMDを知ったのは、『Kitsune X』にコンパイルされていた“The Count”という曲がきっかけです。当時、シーンには4つ打ちのトラックが溢れていたけれど、そこから解放されている音に新鮮な驚きを感じたんです。彼らがUKのアーティストだと知ったのはもっと後になってからですね」
──
その頃、SMDの二人はどういう形で自分たちの音楽を表現しようと思っていたんですか? 
JAMES SHAW(以下: JS )
「僕たち二人が在籍していたバンド、SIMIANが解散してからSMDとして本格的に活動しています。当時は特に方向性を決めていたわけではなく、自分たちが楽しいもの、DJをする時にプレイしたいと思えるものは何か、というのを純粋に実験していたんです」
JAMES FORD(以下: JF )
「僕はシカゴハウスやアシッドハウスなど、初期のダンスミュージックが好きで、バンド時代からAPHEX TWINやLFOなどが気になっていました」
O :
「当時からメインストリームというより実験的なダンスミュージックへの志向があったんですね」
JS :
「ダンスミュージックだけでなく色々な音楽が好きだったので、僕たちの音楽には色々な影響があると思います。いずれにしてもダンスフロアでの盛り上がりは意識しているので、ポップな要素もあるかもしれませんね」

 

──
大沢さんもDJのスタイルや楽曲のジャンルに関して、実はこだわりがないですよね。
O :
「そうですね、フォーマットとかスタイルには固執していません」
JS :
「僕は特定のシーンの音楽だけを聴くのは避けたいと思っているんです。それはシーン自体にとってもいいことではないし、かえって衰退していく可能性もあると思います」

JF :
「エレクトロに関しては、今まさに危機感を抱いています。色々な分野から様々な才能が集まってシーンを作っていた頃は本当にエキサイティングでした。今では既存のものをコピーすることばかりが目立って進化がないような気がしています」
O :
「その通りだと思います。最近のエレクトロは、ノイジーでディストーションのかかったサウンドばかりがフィーチャーされていますよね。SMDの音楽にもそういった側面はあるものの、それだけでなく、繊細さやキッチュでかわいい部分も感じられるんです。でもシーン全体で言えば、ハードなテクスチャーをカットアップ、コピーした模造品も氾濫してしまっている。初期のエレクトロに賛同していた人たちは今や違うところにマインドが行っているし、僕自身もできるだけサウンドだけで識別されないような、音楽性の深さで表現方法を増やしていきたいと思っています」
JM :
「シンイチの手がけるリミックスはとてもメロディックで、音楽性の強いものだと感服しています。それはまさに僕たちが目指していることでもあります。面白いサウンドを突き詰めるのもエキサイティングだけれど、人の感性に訴えるのはやはりメロディだと思うんです」
O :
「確かにそうですね」