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THINK PIECE

Simian Mobile Disco×大沢伸一

Electro is dead?!ダンスミュージックの行方

08 7/22 UP

Text:Tetsuya Suzuki Photo:Kentaro Matsumoto

──
ダンスミュージックシーンが硬直して、フォーマット化されいくなかで、やはりエレクトロもピークアウトを迎えようとしているのでしょうか?
O :
「僕はDJなので、彼らと同じように自分がかけたいと思えるような曲は作っていくと思うけれど、個人的には今の音楽的な興味はフォークにあるんです。メロディックで現代的な感覚がきちんと入っているフォークソングが好きですね。どちらにしても今のエレクトロ飽和状態は長くは続かないでしょうね。SMDみたいに音楽的にきちんとした基盤があったり、アイデアの塊みたいな人でないと今後は残っていかないと思うんです。僕も残っていたいですけど(笑)」
JF :
「ダンスミュージックそのものはなくならないと思います。なぜなら人はダンスするのが大好きですから。僕たちもDJをするので、みんなに踊ってもらうことがうれしいし、さらにその場に深さやメロディなど素敵な要素をプラスしていけたらと思います」
JS :
「10年前に比べると、ロックとダンスミュージックの垣根がなくなってきていますよね。以前はCDショップのROCKコーナーとDANCEコーナーではラインアップが全く違ったけれど、今ではHOT CHIPやLCD SOUNDSYSTEMなど、面白いと思うバンドはどちらでも目にするようになりました」
──
このボーダーレスな状況は、SMDにとっては好ましいのではないでしょうか?
JS :
「SIMIAN時代には、ロックはロック、ダンスはダンスという風潮があったので、僕たちは流れにフィットしにくかったのかもしれないですね。例えば、ライヴの後にダンスミュージック主体のパーティをやろうとすると、ライヴ会場に機材がないので場所を変えなければならなかった。今ではどこでもパーティができるけれど」
O :
「僕がクラブでハウスをプレイしだしてからもう10年以上になりますが、ダンスフロアではその垣根はとっくになくなっていたんですよね。ようやくそれがリスナー側にも伝わったのかなと思います」

──
SMDの二人にはわかりにくいかもしれませんが、日本のダンスミュージックの歴史は常に欧米から輸入してくるものでした。ヒップホップならNYの黒人よりヒップホップの道を突き詰めたり、ハウスだったら有名DJよりも名盤・レア盤を持っていたりと、日本ではダンスミュージックシーンを支えるマニアックなファンの存在があるんです。個人的には最近のエレクトロをめぐるムーブメントは、さまざまな壁が取り払われた状態が面白くはあったんですが、一方でマニアックな深みがまだない分、かえって日本では浸透しにくいという状況があるようです。
O :
「局地的にはオタクはいるんですけどね。でも彼らにとっては僕やSMDはエレクトロではないんでしょう(笑)」
JF :
「その通りだと思います。僕たちはヨーロッパでも『ピュアな』エレクトロではないと思われてるんじゃないかな。ボーカルも使っているし。でもそれでいいんだと思っています」
──
さまざまなシーンを経験し、リスナーとしても色んな音楽を聞いてきて、それぞれ現在独自のダンスミュージックを表現しているわけですが、今後の展望はありますか? 
JF :
「ふだんは音楽についてじっくり考えないようにしています。僕たちの曲作りは本能的で能動的で、次を考えないからこそできることなのかもしれません。個人的にはエクスペリメンタルなもの、例えばクラウト・ロックやウィアード・ディスコ、或いは60年代のサイケやガールズグループに興味があって、それらを今の音楽にどう繋げられるかを考えています。でも今後については、相談して決まるものではないので、あくまでやるだけですね。そこから生まれたものは、自分たちの世界をそのまま表現したものになると思います。でもどんな形であれ、人々を踊らせていくと思いますよ」
O :
「一つ言えるのは、このシーンに関しては世界のどこに行っても同じクオリティのダンスフロアがあって、同じヴァイブで踊ることができる。僕たちはダンスフロアで繋がっているんです。もしエレクトロというぼやけた括りがあるとするなら、それは、このパーティの感覚を共有していることを指しているんじゃないかな、と思うんです」