PART OF THE WEEKEND NEVER DIES
SOULWAXのワールドツアーを追った
ドキュメンタリーDVDが発売
08 12/10 UP
Portrait:Shoichi Kajino Text:Misho Matsue
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- SOULWAX、そして2 many dj'sはロックとダンスミュージックの壁をぶち壊し、間違いなく2000年代のクラブの在りかたを変えた存在で、そういう意味ではパンキッシュですよね。
- 「もしかしたら90年代にすでにその種は蒔かれていたんじゃないかな。かつてはダンスミュージックといえばディスコだったけれど、アシッド・ハウスやテクノなど色々なカテゴリーが生まれてナイトライフがすっかり変わったよね。今ではドラムンベースだけ、或いはヒップホップだけを聞かせるクラブは少数派だと思う。それに70年代の終わりにブロンディーやクラッシュが出てきたけれど、彼らの音楽だってダンスミュージックと呼べると思うし、例えばAC/DCのリズムセクションはとてつもなくファンキーだったりして、僕たちがやっていることはそれに近いものだと思っているから、決して目新しいことじゃないよ。昔からある手法を新鮮に聞かせられるよう、意識はしているけどね」
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- とはいえ、ジャスティスなりクラクソンズなり若手のアーティストはあなたたちの存在なしには生まれてこなかったと思うんです。彼らに対してはどう思いますか?
- 「むしろジャスティスに影響される部分もあるよ(笑)。僕が感じる彼らの特徴は、まったくコンプレックスを持っていないということなんだ。5年、10年前にはアーティストとして音楽を作るには色々なルールがあったと思うし、みんな多かれ少なかれ"罪深き愉しみ"を心に秘めてそのルールに従っていたと思うんだけど、今は『音楽は音楽なんだから、好きなようにやればいい』という風潮になっているよね。クラクソンズが音楽的に僕たちと似ているとは思わないけれど、そういう感覚は共通しているんじゃないかな」
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- SOULWAXなり2 many dj'sが活動を始めたのは様々なルールがあった頃だと思うのですが、なぜあなたたちはそのように自由でいられたんだと思いますか?
- 「僕は19歳の頃にレッド・ツェッペリン、ジミ・ヘンドリックスやダフト・パンクのファーストアルバムを同時に聞いていたんだけど、ダンスミュージックはシリアスなものじゃなくていいと思っていたよ。自分の生活から色々なものをピックアップして楽しめばいいんだ。そしてもう一つ、いろいろな音楽に対して敬意を払ってきたつもりだけど、同時に全く払っていなかったんじゃないかな(笑)。でも僕たちにとってはそれが自然な状態というか。両親はスモール・フェイセズやトム・トム・クラブなんかを家でかけていたんだけど、僕たちの周りには常にいい音楽とそうでない音楽で溢れていたからね。だから僕の中での音楽のカテゴリーって"いい音楽"と"それ以外"の2つしかないんだよ。DJを始めた時は、当時自分たちが聞きたい音楽をプレイしてくれる人がいなかったから、本質的なところでは誰のこともリスペクトしていなかったかもしれない。DJの友だちはたくさんいるけれど、彼らのDJセットをダウンロードしたり分析したりはしないよ。フレッシュでいられる唯一の理由は、周りを気にしないことさ」
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- ところで、ステージでの白いタキシード姿にはこだわりがあるのですか?
- 「コンセプトというほどのものは全然ないんだけど(笑)。リミックスしたトラックをSOULWAXとしてプレイする"Nite Versions"を始めた時、日中に自分たちの曲をプレイし、夜にはリミックスを手がけ別の顔を見せるデュラン・デュランやロキシー・ミュージックのようなバンドをイメージしたんだ。シャンパングラスを片手にしたエレガントなタキシード・スタイルはファッショナブルではないものの、時代を超えてスタイリッシュなんじゃないかと思うようになったよ」