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THINK PIECE

t-Ace

和製ヒップホップの新旗手、
t-Aceが語る "Real Hip Hop"

08 9/29 UP

Text:honeyee.com Photo:Kentaro Matsumoto

現代の日本語ラップの礎を築いたレジェンド達が一堂に会した96年の『さんぴんCAMP』から12年。停滞するシーンに、自身の境遇を綴ったリアルな詞とオーセンティックなトラックから構成されたファーストアルバム『孤高の華01』を投じ、シーンの注目を集めた新世代アーティスト、t-Ace。その彼がファーストの続編『孤高の華02』をリリースする。藤原ヒロシ、MUROなど、過去、そして現在のシーンを形成してきた人物から高い評価を受ける彼は、停滞する現在のシーンに変革を起こすことが出来るのか?

t-Ace

ラッパー、トラックメイカー、DJ。2008年6月、ファーストソロアルバム『孤高の華01』をリリース。また、今年10月には続編『孤高の華02』のリリースを予定。自身の境遇を綴ったリアリスティックな曲がシーンにおいて高く評価される。
t-Ace MySpace

 

──
まずファーストをリリースするに至るまでの経緯を教えて頂きたいのですが、音楽活動はいつから始めていたのですか。
「中学校の先輩の影響でDJを始めて、ミックスCDを作ったりしていたんです。ラップを始めたのは21歳の時なんですけど、その後、自分の曲をミックスCDに収録したり、ライブを行うようになって、それでやっとファーストアルバムを出せたんです」
──
自身でトラックを手掛けている曲が多くありますが、曲作りではトラックとリリックのどちらを先に作りますか。
「リリックに合わせてトラックを作る場合が多いですかね。リリックって、自分が何かを感じたら、その瞬間に書かないとリアリティを表現出来ないじゃないですか。だから、まず先に詞が出来て、その後にトラックを制作するケースが多いです。親父のことを歌った『Tragedy』という曲は、親父が病気で入院した数日後に詞を書き上げて、その後に(藤原)ヒロシさんの『Natural Born Dub』をサンプリングしてトラックを作った曲です」
──
お母さんのことを歌った『Stay With Me Mama』もそうですが、収録曲は実体験にもとづいたストーリーの曲が多いですよね。
「ファーストアルバムに関してはそうですね。自分がどういう人間なのかを知ってもらう、という意味で、ファーストは実体験にもとづく曲を入れていこうかと。ただ、実体験にもとづくストーリーとは別のもの、例えば『自分はこういった生き方をしていきたい』といった曲も、作りたいとは思いますよ」

 

──
トラックはサンプリングによるものがメインとなっていますけど、サンプリングを用いたトラック制作はt-Aceさん自身のこだわりなんですか。
「そうですね。小さいサンプラーでループを作って、そこにドラムを足していく。すごくシンプルな作り方ですけど、そこでセンスが問われるじゃないですか。それはヒップホップミュージックの醍醐味だと思うし、サンプリングという手法は今後も続けていきたいと思っていますね」
──
トラック制作はサンプリングというオーセンティックなヒップホップの手法を踏襲していますけど、新譜も聴くんですよね。
「僕の地元の水戸は、ミドルスクール、ニュースクールヒップホップの人気が高いですけど、新譜も聴きますよ。まあ、時代によって異なる魅力がありますから。ただ、これはあくまで個人的な意見ですけど、シンセやキーボードで作る曲ではオーセンティックなヒップホップ独特の、土臭い質感を生み出すのは難しいかなとは思っています」
──
トラックメイキングに関して海外アーティストから影響を受けることはありますか。
「DJ PREMIERやJUST BLAZEなんかは、やっぱり優れたトラックメイカーだと思いますけど、僕等日本人が彼等の真似をするのは違うかなと。彼等は子供の頃に聴いていたソウルとかファンク、そういう身近にあった音楽をサンプリングしてトラックを作っているわけだけど、それは向こうの人のやり方だから。僕は日本人だから、例えば、桜の花が散る時の儚さや、紅葉の美しさとか、日本人だからこそ理解出来る『情緒』を音で表現していければと思っていて、そうなると太いウッドベースの音を引っぱってくるよりは、メロディアスなピアノの音をサンプリングして曲を作る。その方が日本人の心に突き刺さるものが出来上がると思いますし」