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THINK PIECE

NEXT STAGE OF ATAK

「最初の一人になるより、最後の一人になりたい」

09 4/22 UP

Photo:Shoichi Kajino(Portrait) Furuya Takeshi(Live) Text:Tetsuya Suzuki

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渋谷さんは、自分自身やレーベルを受け手側にどう定義付けていきたいのでしょうか。
「当たり前ですが、僕は会社をやりたくてレーベルを始めたわけじゃないんです。自分のCDをリリースする時に、パッケージからメディアの露出のさせ方、流通のコントロールなど全て完璧に自分でオーガナイズしたいと思ったからです。それから偶発的に、他の人の作品を出すようになったけど、最初からそういうことを考えていなかった。あと、今の40、50代の人がレコードに愛着があるように、僕はCDに対してちょっと複雑な愛着がある。でも無くなるであろうメディアであることは確かで、ATAK自体もこの先、CDのリリースが続いていくのかはわからない。ただ、モノにしておいた方が残るというのも事実としてあるので、これは残さないといけないと思ったものは残したいし、レーベルをやっていてそれが出来る立場なのだから出来ることはした方が良いという気持ちはあります。 例えば『ATAK NIGHT4』に出演してもらう、刀根康尚さんは73歳の現役最年長のサウンドアーティストですが、もう30年くらいニューヨークに住んでいて、万葉集の文字を全てスキャニングして、デジタルデータに変換し、4000首全てを音響化するというかなり過激な作品を作っている。10年以上かかっているらしいのですが、それが完成したんです。全部聴くと2000時間かかるという怪物的な作品なので(笑)、それは抜粋盤としてCDにするとかじゃなくてアプリケーションにしてCD-ROMと本人の執筆によるブックレットのセットとして発売します。CD-ROMはCDよりも売りにくい、とかそういうことはあまり問題じゃなくてCDというのは本来データを焼き付けるメディアでしかないわけだから、そのデータに価値があれば必ずセールスや評価というのはクリアできる問題だと思っています。だからCDレーベルというのもそこまで拡張して考えたほうが面白いのではないか、という気持ちはありますね。また、最近リリースしたPan sonicのMika Vainioのソロアルバム、『ATAK012 OLEVA Mika Vainio』は、DATというテープメディアに一発で落とす電子音楽という非常に特殊な成り立ちなのですが、コンピュータによるエディットは無しで、電子楽器による演奏の一発録りをテープメ ディアに落とすというのは彼が最後になると思うので、これもアーカイブとして意味があると思っています。あと5月にリリースする『ATAK013 ligne i8u+Tomas Phillips』はカナダとイギリスのアー ティストのコラボレーションによるドローン、フィールドレコーディングの傑作ですが、これは僕が完全にプロデュースしました。
ドローンはここ数年ヨーロッパで流行している音楽のスタイルですが、僕はこれ以上に面白くて美しいものを聴いたことがないです。だから基本的には、自分の作品をリリースするというのが中心にありますが、ATAKのメンバーであるevala、他の近しい人たちやこれは新しい、面白いと思った作品を一番望ましい形で出すプラットフォームだと考えています。自分がその時やりたいことがアコースティックならばアコースティックのCDを出せばいいと思うし、電子音楽なら電子音楽のCDを出せばいい。ちなみに自分のアルバムについて言えば、7月に急遽、ここ1〜2年のデジタルの作品をまとめたサードアルバムをリリースすることになりそうです」
──
とはいえ、個人的なエゴのみでやっているわけではないですよね。主力となる商品はCDだけど、イベントやコンピュータアプリケーションといったもので、自分達のコミュニティーをメディアとして紹介していくのがATAKなのではないでしょうか。
「そう思います。というか最近そのバランスが意識しなくてもとれてきているようにも感じます。ただ、やはり重要なのは『今まで聴いたことがない』とか『感じたことがない』という部分でこれはCDやコンサートなどメディアが変わっても共通しています。9月に初めてピアノソロのアルバムをリリースするのですが、 単にピアノをレコーディングしましたというものではなくて、電子音楽を聴いてきた人も聴いたことがない精度でピアノを録りつつ、楽曲として聴いても満足できるという聴き方のレイヤーが絡みあったものになると思います。ピアノというメディアを使って、現在できる最もピアノに適していることをやれれば良いなと思っています。だからメロディーもコードも音響的な精度も全てある、というものになっていて、それが出来たことはすごく新鮮でしたね」

 

『ATAK NIGHT4 Japan Tour』

山口公演
2009年4月29日(水)開場19:00 / 開演19:30
会場:山口情報芸術センタースタジオA
料金:2,000円(前売)、2,500円(当日)
出演:渋谷慶一郎(ATAK)、池田亮司、刀根康尚 、evala (ATAK, port)
【チケット取り扱い】
山口市文化復興財団チケットインフォメーション
TEL:083-920-6111(10:00〜19:00火曜休暇)
山口県情報芸術センター

京都公演
2009年4月30日(木)開場19:30 / 開演20:00
会場:京都CLUB METRO
料金:3,000円(前売、フライヤー持参)、4,000円(当日)
出演:渋谷慶一郎 (ATAK)、池田亮司、刀根康尚、evala (ATAK, port)
DJ:DJ iToy(shrine),DJ JIMIHENDRIXXX(ATAK)
【チケット取り扱い】
チケットぴあ:0570-02-9999(Pコード:314-833)
ローソンチケット:0570-084-005(Lコード:58577)
CLUB METRO

東京公演
2009年5月3日(日)開場23:30 / 開演24:00
会場:代官山UNIT
料金:4,000円(前売、フライヤー持参)、5,000円(当日)
出演:渋谷慶一郎 (ATAK)、池田亮司、刀根康尚、evala (ATAK, port)+スペシャルゲスト
DJ:中原昌也、露骨キット (YumYumMummy!)
【チケット取扱い】
チケットぴあ:0570-02-9999 (Pコード:316-164)
ローソンチケット:0570-00-0777(Lコード:78949)
UNIT

 

『ATAK012 Oleva Mika Vainio』

2,310円(税込)
レーベル:ATAK
発売日:2009年2月18日発売
価格:2,400円(税込)

 

『ATAK013 ligne i8u+Tomas Phillips』

2,310円(税込)
レーベル:ATAK
発売日:2009年5月20日予定
価格:2,400円(税込)