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THINK PIECE

RÖYKSOPP『JUNIOR』

ロイクソップ、3年半ぶりとなるアルバム『ジュニア』をリリース

09 3/24 UP

Photo:Kentaro Matsumoto Text:Misho Matsue

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これまでの作品と『ジュニア』では、サウンドが豹変したわけではなく、たとえばリード・トラックの「ハッピー・アップ・ヒア」は少し「エープル」を彷彿とさせたり、これまでの世界観も踏襲しつつ、さらに広がりが生まれているように感じました。今回のアルバムを作るにあたって、中心に据えたコンセプトや、徐々に曲作りの密度が濃くなっていく中で見えてきたものなど、何かキーワードはありますか。
S :
「『ジュニア』はごく自然な流れで生まれたんだけど、今言われたように、これまでの経験や知識を土台に、さらに僕らの世界観を広げることを意識して作ったよ。今回は女性ボーカルを際立たせようと思ったのと、前作は言うなればヘビーで影のある感じの曲が多かったから、今回は明るくて軽い要素も取り入れてミックスすることで、幅を持たせたかったんだ。このアルバムでは、例えば子供がお菓子屋ではしゃいでるような幸福感や、ちょっとした妄想、胸が張り裂けるような思い、あるいは過去のものへの憧れ、未来への展望など、さまざまな感情を表現しているよ」
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今、「軽い」という言葉が出てきましたが、現在の世界を取り巻く状況とは少しギャップを感じる雰囲気でもある気がします。そこに何かメッセージを込めていたりはするのでしょうか?
T :
「アルバムの雰囲気には、もちろん制作時の僕たちの心情も反映されていたとは思うんだけれど、こういう大変な時期にはコメディや軽いタッチの作品がたくさん出てくるように、『世界に明るい希望を持たせよう』とか、『みんなを笑顔にして辛い気持ちを忘れさせよう』と意図したわけではないんだよね。とはいえ、聴いた人たちが僕たちの曲を聴いて元気になったり、明るい気持ちになってくれたら、それはそれで嬉しいね」

 

S :
「でも、本気で音楽に救いを求めている人は、スティービー・ワンダーやマイケル・ジャクソンを聴いたほうがいいよ(笑)。本当にそういうメッセージが込められた音楽だしね」
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「You don't have a clue」は前作のツアー中にできた曲だということですが、この曲を始め、先ほども仰ったように、今回は女性ボーカルを多くフィーチャーしていますよね。アンネリ・ドレッカー、The Knifeのカリン・ドレイヤー・アンダーソン、リッケ・リー、そしてロビン、皆さんスカンジナビア出身のボーカリストですが、ここにはこだわりがあったのでしょうか。
T :
「いや、特にこだわってはいなかったんだ。でも、歌唱力をやたらとひけらかしたり、変に自信過剰だったりしない人を探していたら、結果的にナイーヴでさり気ない『北欧的な』歌い方がしっくりきたのかもしれないな」

S :
「あとは、僕たちが今、幸運にもインターナショナルに活動しているからといって、例えば英米の有名な女性シンガーに参加してもらったりすると、それだけで先入観を持たれてしまうから、曲の持つ本質的な部分は曇りがちになってしまうと思うんだ。だからそこまで知名度がなくても、個性と魅力のある声を持った人たちということで、彼女たちにお願いしたんだ」
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ところでここ数年、Myspaceがインターナショナルなプロモーションツールとして確立されていると思うものの、メディアとしてのMyspaceについてはどう思いますか?
S :
「例えば今回、リッケ・リーはMyspaceで発見したんだよ。彼女の歌声を気に入って参加してもらうことになり、素晴らしい曲ができたという意味では、良い音楽を見つける上ですごく便利なツールだと思うよ。僕たち自身はといえば、ページには関わってはいないんだけどね」
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なるほど。アルバムに参加した4人のシンガーのうち、例えば今名前の挙がったリッケ・リーに関しては、Peter Bjorn And JohnのBjorn Yttlingがプロデュースをしていますが、今回のアルバムで4人ものアーティストに歌ってもらったことで、プロデュース業に興味が出てきたりはしませんでしたか。
S :
「そうだね。これまでにもリミックスは数多くやっているし、僕たちと同じくノルウェー出身のAnnieというアーティストのプロデュースもしたことがあるんだけれど、もし今後気になるアーティストがドアをノックしてくれれば、『どうぞ、入って』と答えるよ」