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THINK PIECE

EDITORIAL PARADISE

「越境的編集者」菅付雅信の時代表現

09 4/6 UP

Photo:Shoichi Kajino Text:honeyee.com

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編集作業というのは純粋にクリエイションに特化したものではありません。算盤をはじけないと駄目ですし、過去のデータを分析してマーケットの将来を予測しないといけない。そして、人とのコミュニケーション。スタッフ、関係者とのコミュニケーションこそが出来上がるコンテンツの良し悪しを大きく左右します。菅付流の交渉術、コミュニケーション術のようなものはありますか。
「例えば大御所のクリエイターの方に仕事をお願いする場合でも、大御所だからということを理由にハナから諦めることはしないですね。『あの人は気難しいらしいよ』みたいなことが周りで囁かれていても、それは単に噂かもしれないですし。だからどんな大御所でも、まずは自分で当たってみないといけない。そもそもクリエイターと呼ばれる人たちはある種のキチガイですし、気難しい部分があって当然。だから、まずは自分で当たってみる。そうすれば意外とOKが出て、一緒に仕事をさせて頂けるんです」
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OKを出してもらうための菅付流テクニックがあるのでしょうか。
「相手のことを調べることじゃないですか。相手がどういう人で、どういうことに興味を持っていて、どんなことをオファーしたら喜ぶのか? をとにかく考えます」
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編集者はクリエイターのクレイジーな部分を、ロジックを用いて引き出していかないといけない。つまり合理化をしていかないと仕事にならない。そのような部分がアーティストとの一番の違いですよね。
「『彼岸』、『向こう側』に行っている人たちとこの世をつなげる仕事ですからね。優れたキチガイの人たちに世間の金を渡す、それでより面白いものが出来あがって、それをまた世間に伝えていく。狂っているものをこの世に流通させるのが編集の仕事だと思います」

 

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あの世とこの世をつなぐバイパスを作り上げるのが編集の仕事であると。けれど、あの世に身を置いているアーティストの中にも、例えば村上隆さんのような、編集的な仕事を自ら行う人も増えていますね。実際、出版物のなかにはアート・ディレクターが編集の仕事をしている場合もありますし、アートの世界をこの世に向けてエディットしている村上さんのような人もある種の「編集者」と言えますね。
「確かに村上さんの仕事の仕方は編集的だと思いますね。それ以前に、僕たちが日常生きている中にも『編集的な感覚』というものがあると思うんですよ。作品集にも書いていますけれど、編集は職業ではなく方法論だから誰もが使えるものなんです。あとは、如何にして他人を巻き込んでいくかということも編集をする上での大きなポイントですよ。コミュニケーションが成立した、もしくは成立するだろう見込み報酬としてお金を貰うわけなので。コミュニケーションを通じてあるシチュエーションをセットアップしていくという意味では、小山薫堂さんやトランジットの中村貞裕さんがやっていることも編集的だと思っています」
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編集というメソッドが幅広い分野で使えるということを強く意識したのはいつ頃からですか。
「それはこの仕事を始めた時から意識していましたよ。僕が編集の仕事を始めた頃は広告ブームの時で、当時、糸井(重里)さんなどが広告の世界だけでなく、詩を書いたり、テレビの司会をしたり、色んな活動をしていたんです。その光景を目の当たりにして、これは編集者もやるべきというか、編集者こそやるべきだと思いました」