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THINK PIECE

History of Lewis Leathers Part2

英国カルチャー史における最重要ブランド「ルイスレザーズ」。
5代目オーナー、デリック・ハリスが語る伝統と革新。

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Text:Andrew Bunney Photo:Tommy Translation:Mayumi Horiguchi

A :
ディテールに関しては、どれくらい徹底して正確さを求めていますか。
D :
特に日本がそうだけど、多くの外国にある会社が極端なほど徹底的に正確なフライング・ジャケットやタンク・ジャケットなどのレプリカを作っている。例えば、ステッチ・フォー・ステッチとかね。しかし、我々は、快適さを感じるために、使い込まれなければならないのでそういうことはしない。普通、誰かが第二次大戦スタイルのジャケットを着るとしたら、全体のルックとしてハイウェストのトラウザーズなど、そういったもの全部をトータルで身につけなきゃならないだろ。しかし、我が社のジャケットは常にフィットするように仕立てられているから、例えば、君が既製品のジャケットを買ったとしても我々は喜んで、オーダーメイドの場合と同様にあつらえ直してあげるよ。ここ最近、パンツを腰で穿いている人が多いから、1950年代のスタンダードのブロンクス ジャケットを注文によって作れるようにしている。そのシェープをスタンダードとしてしつらえるのに全く問題はない。なぜなら、他の誰もが助けてはくれないだろうからね……。ゆえに我々はジャケットすべてを、注文によって生産できるってことさ。納品の期日は三週間以内。スタイリングに関して言えば、ポケットはすべて細部までこだわった作りになっている。ジッパー、裏地、すべてのディテールが作りえる限り正確なものになっているし、パターンに関しては軽く修正を施した。ショルダーの部分が、ちょっと大きめになっているが、それはショルダー部分が伸び縮みできるように仕上げているからなんだ。なぜなら、これを購入する人の中にはバイクに乗っている人がいるからね。

何かをコピーして、「これは完璧だって」言えるようにするには、本当にハードだったよ。僕は3枚のヴィンテージ・ライトニング・ジャケットを地下に所有していて、いすれもサイズは38なのにすべて異なっているんだ。機械工の腕次第で、出来映えが異なったのかも知れないし、あるいはすべてがオーダーメイドで、それぞれが背の高い男、中背の男、そして背の低い男のために作られたからかも知れない。適当なやり方はあり得ないので、我々はスタンダード・サイズとオーダーメイドのサイズを用意している。そうすることで、ジャケットのルックは極端に本物っぽく見えるようになっている。職人が作るやり方はまさに本物さ。
A :
カスタマー・サービスは実に見事です。これはルイスレザーズの重要な特徴だったんでしょうか。
D :
ああ、その通りだ。我々は常にオーダーメイドの製品を提供してきたからね。今もこのサービスを続けることができて、本当に誇らしく思っているよ。我々は、顧客のボディから袖の長さに至るまでのサイズをきちんと計ることで、例えば、我々が提案するものよりもちょっと長めのボディのものを顧客が希望したとしても、それは本人次第で合わせることができるんだ。ポケットを増やしたり、なくしてしまうことも可能。裏地を赤いキルトにもできるし、英国防省の裏地にすることも可能なんだ。さらには、スリーブの下やボディの至るところにストライプスをつけられるし、パッチをミックスして合わせることもできる。例えば、ショルダーとエルボー部分にブラウンのパッチがついた黒のジャケットを手に入れることだって可能なのさ。我が社はかなり融通がきくんだよ。

 

A :
現代という時代に適切な製品とは、どういうものだと思いますか。古いスタイルを焼き直しすれば、それで充分なのでしょうか。
D :
我々は今に至るまでずっと、出来る限り確かなものをつくりり出そうと努力し続けているだけさ。製品の種類を広げようとしてはいるが、会社のアンカーマンとしてルイスレザーズをあるがままの姿でキープし続けている。それに、今でも伝統的な名前を欲している男達のために、様々な甲冑を身につけ、ルイスレザーズを守っているんじゃないかな。当分の間、我々はカジュアルな服を増やしていくつもりだ。かなり、ゆっくりとね。過去には、ドーバーストリートマーケットとコム・デ・ギャルソンのために、スペシャル製品を数点作った……ギーブス&ホークスとも仕事をしたし、ヒステリック・グラマーとも仕事をしたことがある。我々は、自分たちのペースで仕事をすることにより管理もできているんだ。ルイスレザーズがどんな風になるか、様子を見ていてくれよ。
A :
なぜ、多くの人々が共鳴するんだと思いますか。
D :
人々がティーンエイジャーだった頃に、手に入れて放さない特別なものだったからだろう。子供の時に、アップルパイとカスタードを食べるのが好きだったのと同じ――国を出て外国に住んでいたとしても、いつでもアップルパイとカスタードを食べたいと思うものさ。レザージャケットは時を経れば経るほど強い結びつきを感じられるようになり、他の場合と同様に長く持ち続けることになるんだ。レーサー、バイカー、そしてロックンローラーなど、様々なタイプのヒーロー達が着用してきたジャケットだからこそ、テストステロン(男性の闘争心を司るホルモン)、反抗、ホワイト・ナックル・ライディング(*注6)と共鳴するんだと思う。だからこそルイスレザーズのジャケットには冒険感覚があふれている。ドクターマーチンのブーツとブローセル・クリーパーに関しても、これと同じ事が言えるね。
A :
この仕事に関して、最も楽しんでいることは。
D :
すべてだね。旅行に出かけたり、人々と知り合ったり。以前の経営者だったリチャード・リオンが「ルイスレザーズを通じて得たものは、いつだって最も興味深い人々に出会えたことだ」と言っていた。クリエイティヴな人々だろうが、歴史あるバイカーだろうが、様々な人々と出会えるんだからね。

*注6:「ホワイト・ナックル・ライディング」:ジェットコースターに乗った時などに、スピードに耐える為にバーをぎゅっとつかみ、拳が白くなる様を表して、かなりのスリルや興奮を指すスラング。