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THINK PIECE

Dick Page reveals his truest colors

メイクアップ・アーティスト
ディック・ページの様々な顔

08 12/12 UP

Text:Tiffany Godoy Photo:Courtesy of Jed Root Translation:Miho Matsumoto

ファッション業界人に関してよくある誤解のひとつに、ひたすら仕事の話しかしないというものがある。
つまり、最新トレンドや大注目の若手モデルについて友人と一日中喋りまくっているイメージだ。
しかしNYを拠点に活躍するイギリス人メイクアップアーティストのディック・ページについては、その限りではない。
彼は自分の仕事や生活においてアンチファッションなアプローチを取っており、いんちきな物を嗅ぎ分ける鋭い感覚の持ち主だ。
本人もこのあり方を気に入っている。コスメのイリュージョニストである彼には、様々な顔が隠されている。

ページはここ10年あまり、世間に多大な影響を与えた様々な広告キャンペーンに関与してきた。
イヴ・サンローランやマーク・ジェイコブスを思い出してみるといい。
彼がよく組むのはオランダ出身でNYをベースに活動する写真家デュオの
イネス・ヴァン・ラムズウィールド&ヴィヌード・マタディン、そしてドイツ人のヨーガン・テラーである。
一分の隙もない色使いで有名な彼が、イギリス人でしかありえないほど
シニカルで意地の悪いユーモアの持ち主だということはあまり知られていない。
彼のアクセントは強いイギリス訛りで、とてもとてもドライな話し方をする。

東京を何度も訪れているページと会うチャンスに恵まれた。 彼はここ10年ほど東京とNYを行ったり来たりしていて、
2007年には資生堂のThe Makeupラインのクリエイティブ・ディレクターに任命された。
彼と表参道を見渡すテラスで落ち合ったのは2日間ぶっ通しでビューティ誌やファッション雑誌の インタビューを受けた後だったので、
もう日本の美容産業や化粧品の最新トレンドについて話すのにうんざりし始めているようだった。
そこで同じ話題を繰り返す代わりに、晩秋の暖かい空の下で赤ワインを飲みながらたわいもないおしゃべりをして、
彼がブリストルの出身であること、セレブの顧客、それに彼の言う「ランダムな」仕事に対する姿勢から生まれる
思いがけない幸運などについて話した。血生くさい精肉処理の話、馬を食べる話、
外見に見合うクールなハリウッドのセレブは誰かといった話に興味がある人は、ぜひこのインタビューを読んでほしい。

Dick Page / ディック・ページ

イギリス、ブリストル出身で現在はNYを拠点に活動するメイクアップ・アーティスト。
トップブランドのランウェイ・コレクションや広告、モード雑誌などで活躍中。
2007年より資生堂のThe Makeupラインのアーティスティック・ディレクターに就任。

 

──
日本に来るようになったのはいつ頃からですか?
「初めて来たのは1997年で、INOUIラインを担当するようになったときだ。INOUI IDというブティックラインを立ち上げた当初はどこでも取り扱ってなかった。一番多く展開した時でさえ、日本中で9店舗だけだったよ」
──
少なすぎませんか!?
「そうなんだよ!そのうちそのラインは廃止になって、(2007年)3月にThe Makeupラインを担当するようになった。日本に来るようになったのは資生堂のおかげなんだ」
──
日本はコスメ大国ですよね。
「でも何より素晴らしいのは髪だよ。撮影やショーでメイクアップにかなりの時間を費やしているから、日本に来ていつも髪の美しさに驚かされる。西洋的な考えに偏っていることも認めるし文化的な極端さに注目してしまうと言う点も確かにあるけど、やっぱりこしがあってまっすぐな黒髪に勝る美しいものはないと思う」
──
でももうそんな黒髪はお目にかかれませんよね。
「そうなんだよ(笑)!まったくお目にかかれない!でもこれはファッションや美容のフェティッシュな一面なんだ。髪質や肌の色に対してフェティッシュになっちゃうんだよ。僕は北極地方とかグリーンランドの北のほう、スカンジナビア諸国を旅行するのが好きなんだけど、北に行けば行くほど小柄で小麦色の肌をしたイタリア人を好ましく思うようになる。北に行くほど人はより白く、赤く、ピンクになってくる。とても美しいと同時に、異様だ。ひたすら白い人か、そばかすだらけで赤い髪のケルト系の人か、両極端なんだ」