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THINK PIECE

Dick Page reveals his truest colors

メイクアップ・アーティスト
ディック・ページの様々な顔

08 12/12 UP

Text:Tiffany Godoy Photo:Courtesy of Jed Root Translation:Miho Matsumoto

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女の人を見てまずどこに目が行きますか?
「それは人によって全然違う。身のこなしとか態度とかで大きく変わるんだ。メイクにも目が行くけど、それは二の次だね。いつもメイクばっかり気になっていたら、おかしくなってしまうよ」
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メイクアップアーティストになる前は食肉処理の仕事をしていたとか?
「食肉解体場で働いていたんだ。新聞配達より実入りがいいって理由で、13歳の時に働き始めた。放課後とか週末だけね。僕の生まれはイギリス南部の沿岸地方だけど、その後西部に越して、そこで育った。ロンドンに移ったのは87年のことだ」

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ロンドンに引っ越す前からファッションやカルチャーに興味があったのですか?
僕はブリストル出身なんだ。ブリストルのクラブシーンといえばThe Wild BunchにMassive Attackに、小さなどうしようもない田舎町から名前を取ったPortisheadなんだ。アメリカに行くと誰もかれもが『ポーティスヘッドを知ってる?』って聞くから、『ああ、僕の町のすぐ近くにある小さなくだらない町だよ』って答えることにしてたんだ。おかしいのは、イギリスってすごく狭い国なんだよ。外に出てみて初めて気づくんだ。でもそんなに小さな国なのに、カルチャーの面では世界に対して多大な影響力を持っている。屑みたいな小さな国から音楽もファッションもすべて生まれた。基本的にイギリスでは若者が楽しめるようなものは何ひとつないから、自力で生み出さないといけない。こういう寄せ集めみたいなメンタリティは、他にやることがないから生まれたんだよ。天気も悪いから、外で遊ぶこともあまりできないしね」
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ロンドンと東京には類似点がたくさんありますよね。
「どっちも島国で、帝国時代を経験したことがある。かつては(ロンドンでは)面白いことがたくさん起こっていた。でもそれを台無しにしちゃったんだよね。イギリスにはいまだに女王様が鎮座ましましているし」

 

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どちらの街も独自の美学がありますし、イギリスのファッションは日本のファッションに大きな影響を与えましたよね。
「逆も真なりだね。両方とも、エキセントリックなものを培養するようなカルチャーがあると思う。ロンドンも東京もきちんと抑制されていて、というステレオタイプな見方がされているけど、まったく間違っている。イギリス人の場合、ダークで残酷すれすれのユーモアから生まれているものも多いと思う」
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NYの生活は気に入っていますか?
「すごく気に入ってるよ。狭い街ってところがね。まるで村人のような気分だ。どこでも徒歩か自転車で行ける。LAはやたらと大きくて、怖いんだ。仕事に行くのに45分もかけて街の端から端まで行かないといけないし。そこへいくとNYでは1つのテリトリーですべての物事が終わる。僕は以前ウェストビレッジに10年住んでいて、今はソーホーに住んでいるんだ。仕事の面からいえば、とても楽だよ。ロンドンでの生活は厳しかった。僕はすごくクリエイティブだったけど、クリエイティビティを食べて生きていけるわけじゃないからね。家賃も払ってくれないし。それでアメリカに移った時は、『お金をくれるんだ!』って新鮮に驚いたよ」
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NYに移り住むことを決めた時点で、フォトグラファーとして、またメイクアップアーティストとして妥協せざるをえなかったように思えます。本当にクリエイティブなことができていると感じていますか?
「そう思うよ。とてもラッキーだし、それはユルゲンやジェニー・ゲイジ、トム・ベタートンみたいに一緒に組んで仕事をしているアーティストとか、資生堂でやっているデザインの仕事のおかげでそう感じる。でもそれと同時に僕は自分の時間軸で、自分で決めた方向に進んでいる。年をとると、わかりきったことをやり直す必要はなくなるんだよ」
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それよりも自分のスタイルや感覚を磨くことが大切になってくるんですか?
「自分が何者か、様々な状況で自分が与えられるものは何かということをより深く知ることだね。それに、密接に仕事をするデザイナーという存在もある。僕の場合、マイケル・コースとは10年間一緒に仕事をしてきている。お互いにバックグラウンドも感覚もまったく違うにもかかわらずとてもいい関係を持てているし、彼のやり方、彼の世界で働くことに何の依存もない。逆もそうだね」