honeyee.com|Web Magazine「ハニカム」

Mail News

THINK PIECE

ワイデン+ケネディと東京

Mission : W+K session

08 1/28 UP

Text:Masahiro Hattori Photo:Shoichi Kajino(atelier L'APPAREIL-PHOTO)

03:型にはまってない人たちとの積極的なセッション。情熱というのはひとつの武器。


まだ、聞き慣れない言葉、アートバイヤー。そのアートバイヤーという仕事は何をするのか?そのアートバイヤーという仕事が成立するその目的とは?“ワイデン+ケネディ東京”でアートバイヤーを務める飯田昭雄氏とグループアカウントディレクターである湯河テッド氏にその秘密を聞いた。

Ted Yukawa / テッド 湯河

グループアカウントディレクター。1998年よりW+Kに参加。東京オフィス創立時からのオリジナルメンバー。日本、アジア地域におけるナイキアカウントマネジメントを手がける。様々なアイディアを現実のカタチにするアカウントマン。

Akio Iida / 飯田 照雄

プロデューサー/アートバイヤー。多摩美術大学建築学科卒業後、白夜書房へ入社。その後、書籍やエキシビションのプロデュースを手がけるフリーの編集者 /キュレーターを経て2005年W+K入社。現在はプロデューサー/アートバイヤーとしてナイキを中心としたプロジェクトに関わり、東京ストリートアンダーグラウンドに幅広い人脈を持つ。


──
ア−トバイヤーとは何ですか?

飯田照雄(以下I)

I :
ポートランドの本社に、世界でもトップレベルのアートバイヤーの部署があって、そこにはあらゆるジャンルのアーティスト、カメラマン、イラストレーターのデータベースが常にストックされていて、例えばアートディレクターが今回の撮影でこういったカメラマンを考えてると言われた時に、こういった人たちがいるということをレコメンドしたりとか、アンダーグランドの人たちをリサーチしたりとか、クライアントのプロジェクトに対して、アーティストやクリエイターを絡める時のアーティストを管理する。それに加えて主に平面のプリント関係のプロダクションの管理。カメラマンだったらスケジュールを組んだりだとか、ブッキングなど制作を含めた全ての裏方というか、そういったことをしてるところなんです。もともとW+Kトウキョウにはそういう部署がなかったんですけど、ジョン・ジェイから声がかかって、東京にもそういうアートバイヤーのセクションを作りたいという誘いがあったので参加しました。

テッド湯河(以下Y)

Y :
クリエイティブのアイディアにトップスピンをかけられるというか、クライアントからもそういうものを求められるし。
──
日本のアーティストをですか?
I :
いえ、そこはグローバルで。ただ僕は、以前BAPEギャラリーのキュレーションや編集という仕事をしていたので、東京でしか探せないアンダーグランドな人たちやユニークな人たちも見つけるようにしています。幸いなことに僕のまわりには、様々なタイプのアーティストやクリエイタ—の友達がいるので、そこはすごくありがたいと思っています。
──
もともと知っているアーティストというのはともかく、誰も知らないようなアーティストを探すことがミッションとなった時にはどんなことをされますか?
I :
あらゆる手を使いますよ。もちろんインターネットや友達の紹介とか。普段からどれだけアンテナを張っているかというか、ジャンル問わずにいろいろな人たちと会って、そういう情報を入手できるかがとても重要なんです。

NIKE JAPAN "JUST DO IT TOKYO" 2007NIKE JAPAN "WEAR US YOU LIKE" 2000


──
アート バイイングという考え方というのは、もとからあったものですか?それともワイデン+ケネディがスタイル化したものですか?
Y :
アート バイイングは、ストラテジックプランニングのように新しい職種でもあるんですけど、グラフィックのプロデューサーで、アメリカでは普通に広告の専門職としてあるんです。イベントでのインスタレーションとかに建築家を起用したり、守備範囲は広いです。
I :
ワイデン自体は、わりと型にはまっていない人たちと積極的にセッションしようという体質があるから、僕らも何の躊躇もなく、出始めたばかりのアーティストであっても、ストリート最前線のグラフティアーティストであっても、才能さえあると判断すれば起用することができます。他の代理店では使えないようなアーティストをプッシュできるという意味では凄く面白いですよね。
──
アンダーグランドなものと積極的にセッションしていくことのメリットは何でしょうか?
Y :
まず、常に新しいクリエイションやアイディア、表現を世の中に出していきたいという単純な欲望を満たせることですね。W+Kは、クリエイティブ最優先主義なので、やはり新しいことを生み出していかないと進化はない。常に新しい可能性を求めています。あと、ダン・ワイデンがよく言うんですが、ポートランドの本社に大きく「Fail Harder」という言葉があって「もっと大いなる失敗をしろ」と。失敗を恐れては、何も成功はないので。それをいつも意識してることが、DNAのひとつなんじゃないかなと思います。
──
それをクライアントに、どのように説得したりコミュニケーションを続けたりしてするんですか?
Y :
最終的にはクライアントの判断によるというのがありますけれど、出来る限りプッシュします。美術の状況であるとか各競合がやっていることがある中で、製品的な差別化ってどんどん薄まっています。そのブランドなり商品、商品名との感情的な結びつきや、エッジはどこに生まれるのかというと、やはり表現の部分だったりメッセージの強さだったりするので、そこを出来るだけ攻めていきます。カルチャー、環境、ビジネスのマーケットの状況、コンシューマーのライフスタイルとか、その商品カテゴリーとの関係とか。どういう風にテレビを使っているのか?どういう風にスニーカーを履いているのか?どういう風にショッピングしているのか?そこをできるだけ360度、様々な角度から説明してみますけどね。ナイキのように本能的にわかっているクライアントは、さっき言った許容範囲を理解していますが、日本のメーカーが海外に進出して、飛び抜けたビジネスを目指していきたい、ブランドも差別化していきたいという大きな目標をたてた場合に、保守的になっていられないです。

NIKE JAPAN "JUST DO IT TOKYO PARK @ YOYOGI PARK" 2007