honeyee.com|Web Magazine「ハニカム」

Mail News

THINK PIECE

STREET WEAR HISTORY

カルチャーの番人"ロジャー・K・バートン"が語る、
ブリティッシュ・ユース・ファッションの歴史

08 11/5 UP

Text:Andrew Bunney Translation:Mayumi Horiguchi

A :
「UKのスタイルやスピリットに関してユニークな点があるとすれば、どんなところがそうだと思う?」
R :
「伝統的な英国人は、変化を嫌う。しかし、若いジェネレーションは変化することが好きだ。親への反発の証として変化することを好み、刺激を望んでいる。おそらく、その親たちも、若い頃は同様に変化することを好んでいたんだろう。ここ20年間に渡る奇妙な時代を経て、キッズの親たちも変わった。彼らはかつて、パンク、モッズ、ヒッピーといった『族』カルチャーに属したジェネレーションだから、今はある意味『何でもアリ』で、以前よりも一層オープンなんだ。自分たちの子供が何をやってもオッケー。だから彼らは、途方もないことをやりまくっているよ」

A :
「あなたにとってのUKファッションの黄金時代はいつ?」
R :
「僕はモッズ関連のものに囲まれて育ったけれど、すべてが相対的に関係している。僕がモッズだった頃、バイカーは本当に嫌いだった。僕はいつだって平和主義者だったから、彼らと戦うことを望んでいなかった。それよりも、服装のことが最重要事項だった。ロッカーズなんかとの戦いに巻き込まれることは、まっぴらゴメンだったんだ。脂でベタベタした、臭い革ジャンを着たバイカーを毛嫌いすることは、エリート主義者が取る行動だったのさ……でも今は、本当に魅了されている。モッズが登場し、去っていったが、バイカーのカルチャーは、今でもずっと続いているんだ。僕は、ヘルズ・エンジェルズを最も尊敬している。当時は大嫌いだったけど、彼らのロゴと、彼らを象徴する画を愛している。成長し、あるファッションの局面をやり通した後だと、物事は一週間毎、あるいは日々変化していくんだよ。英国の若者には『次のものに移行する』という伝統があり、ある程度、過去を忘れ去り、否定する。でも、僕は過去をコレクションし、カルチャーの番人となる道を選んだので、過去を再訪し、理解する必要がある。例えば、僕はまったくヒッピー文化には関わっていない。ヒッピーがらみのものは全て大嫌いだった。ローリング・ストーンズも憎んでたさ。でも、会社としては、その時代の服を映画やテレビのために提供しなければならない。ブライアン・ジョーンズの映画を手掛けた時には、彼が着たものや、彼の仲間たちが着た服に関する研究をし始めたが、まるで最新のものを発見したような気分で、すごく興味深かった」

 

A :
「過去を振り返ることで、我々は何を学ぶことができるのか?」
R :
「そのスピリットが、当時そこに存在していたと感じることができる。でも、それは僕にとっては、単なる郷愁にふけった行為に過ぎない。僕はしょっちゅう、過去から学び続けてばかりいるが、そうしているのは、好奇心ゆえと言えるだろう──『なんで、全然身につけることができないような服を、その人物はデザインしたのか?』という感じで、好奇心をめぐらせている。新しいジェネレーションは、そこに何かがあるとエキサイトする。こういう興味を持たせるものが、80年代のクラブシーン関連のものにはあった。当時のチャックがない服がそれさ。僕にはもはや、キッズが古い服の中に何を見い出しているのか、理解不能だね。彼らにとって、古い衣服がどういう意味を持つのか分からない──きっと僕だけにとって、何か特別な意味を成しているんだ。なぜなら、僕はそれと共に、生き抜いてきたから。今18歳の若者に対して、古着の背景に関する物語のすべてを語り聞かせることが、僕にはできる。でも、その行為に何か意味があるだろうか? 何か共鳴するようなものがあるんだろうか? 僕はそれらの中に、スピリットを感じることができるけど、もしかしたら、そんな風に感じるのは僕だけなのかも。分からないね」
A :
「あなたが探し続けているものとは?」
R :
「主に、個人の所有物を探しているよ。未だにずっと、反乱や暴動時に人々が身につけていた服を探し続けているんだ。時代的には、どんな時代のものでもいい。その手の要素を持つものが、僕を興奮させるのさ。そういう状況下でデザインされたものや身につけられたものが、どんな動揺やショックを人々に与えたのか。どんなに小さなものでもかまわない。カルトやムーヴメントに属したものでなくてもいいんだ。それを身につけていた人の気分を昂揚させた服でさえあればいいのさ。そういったものが、僕を夢中にさせるんだ。僕が探しているものが何なのかは分からない。きっと一度目にしさえすれば、即座に『これだ!』と分かるだろうがね」